ライフ・マネジメント~小林一三論
私が敬愛する実業家の一人である小林一三氏。阪急の創始者で阪神間モダニズムを
築いた人物である。氏の先見性は見事なもので、センスが絶妙である。特に、沿線開発に
かけては第一人者であろう。何しろ、東急を築いた五島慶太の師でもある。
私には氏の説いた好きな言葉がある。
「実業家としてほんとうに仕事をするのは、四十五から六十五歳までの二十年間である。
四十五までは仕事をしっかり覚え、経験を積み重ね、心眼を開く準備期間だ。そして四十
五から真の仕事がはじまり、それから六十五歳までの二十年間にその実業家としてのバ
ックボーンができあがる。」またこうも説く。
「何も苦労もなく育った人には、人情の機微は分からないから大成しない」と
世の親の後を継いだだけのボンボン社長。よう勉強しなはれや!
私は、実業家ではないが、氏の言葉に共鳴する。男としてと言いかえてもいいだろう。
あらゆる分野の仕事があるが、男として生きるうえで、心眼を開けるか否かは、その人の
行きざまによると思う。自分を大きく見せる必要はない。黙って、目の前のことをこなし、え
らぶることなく、謙虚にいる。それでいて、五感を使い、頭をフル回転し、先を見据え行動
する。その繰り返しにより、感性が磨かれる。このサイクルが分かると、苦労が楽しみに変
わり人生そのものが楽しいのである。苦労の先には必ず明るいものが待っている。